東京高等裁判所 昭和27年(う)3098号 判決
被告人 及川龍男 外
〔抄 録〕
弁護人の論旨第二点について。
原判決理由第三が被告人甲が乙等と共謀の上昭和二十五年十二月上旬頃同被告人宅に於て昭和二十四年十一月二十二日附運輸省埼玉道路運送監理事務所長名義の廃車証明書を偽造した旨判示しているところ、右道路運送監理事務所は昭和二十四年八月一日陸運局分室が設置されるまで存続したものに過ぎないし、陸運局分室も更にその後の機構改正により同年十一月一日より陸運事務室として発足したものであるから、昭和二十五年十二月頃は勿論、前記廃車証明書作成日附たる昭和二十四年十一月二十一日当時に於ても道路運送監理事務所なる官庁は存在していなかつたことは所論のとおりである。しかし道路運送監理事務所がその存続当時にあつて、自動車の検査登録事務を処理し、その所長名義を以て自動車に関する各種の証明特に廃車証明書を作成する権限を有していたのであるから、被告人甲の作成した前記昭和二十四年十一月二十一日附廃車証明書の如く、道路運送監理事務所の廃止後さほど日時を経過していない日附の廃車証明書であり、正規に存在していた官庁が適法な権限に基いて作成した廃車証明書であると人をして誤信せしめるに足ること明らかであり、かかる文書を作成した被告人の所為は道路運送監理事務所が実際上廃止せられていたと否とを問わず、公文書偽造罪を構成するものといわなければならない所論は独自の見解に立脚するもので採用できない。